インボイス制度は、副業や私のようなフリーランスには少なからず影響を与えます。
サラリーマンのみの方は、あまり関係がないので関心も少ないかもしれません。
賛否両論飛び交う議題ですが、当事者の一人として考えてみたいと思います。
インボイス制度って何?
賛成・反対の前に、インボイス制度について超簡単にまとめます。
インボイス制度(方式)とは、言ってしまえば本体価格と税金を分けて考える制度です。
店舗購入がいい例ですが、何気なく消費税込みで払っているのではないでしょうか。
インボイスを採用した場合は、消費税に対してインボイスの添付を要求されます。
逆に言うと、インボイス証明がないと消費税を払っていないことになってしまいます。
分かりやすく店舗の例を出しましたが、お店での購入はこれまで通りです。
変化するのは、企業と直接取引をする場合がメインになります。
インボイス導入による変化。”企業が”支払った金額を経費にできなくなる。
勘違いされがちなのは、インボイスがない場合に影響を受けるのは発注元であることです。
現在売り上げの低い事業者は免税事業者となり、消費税を納めなくていいことになっています。
免税事業者と消費税の関係
110円の売り上げ(内消費税10円)があった場合に、そのまま自身の収入にすることができます。
本来は確定申告で消費税分10円を払うのですが、それが免除されるということです。
免税事業者に仕事を頼んだ企業
上の例で、110円(内消費税10円)の仕事を発注したとします。
本来なら全額経費にできるのですが、相手が免税事業者の場合は消費税分10円が経費にできません。
つまり、消費税10%分利益が多く計上され、法人税も高くなります。
よって、免税事業者への発注が躊躇されるのではないかという懸念があります。
つまり、インボイスで一番大きく変わる点は二つです。
- 元々免税事業者だった場合
- 企業からの仕事が減ってしまう可能性がある
- 仕事のために課税事業者になると、収入が10%減少してしまう
- 免税事業者に仕事を発注している企業の場合
- 発注した分の10%が経費にできなくなる
- 経費にできる(=課税事業者)新しい取引先が必要になる可能性がある
インボイス制度には賛成。手法にはまだまだ課題あり?
私にとって負担増になりかねない制度ですが、実は制度自体には賛成です。
一方で、手法や内容にはまだまだ問題があると思っています。
現実的なラインで、制度のあり方に考えてみましょう。
インボイス制度が”揺れる”3つの課題
アンケートではありませんが、ネットを見た中でよくある意見を紹介します。
どのような懸念が指摘されているか、まずは確認してみましょう。
手続きが面倒
新しい制度にはあるあるですね。
インボイス制度の導入にあたっては、私レベル(経理専門でない)でも手続きが増えます。
増える手続き
- 適格請求書を取得し、取引先に連絡する
- 相手がインボイスの対象か確認し、該当する場合に番号を要求する
- 一部のクラウドサービスでインボイスの登録が必要になる
- 確定申告で消費税の計算と納付が必要になる
特にインボイス番号については、相手のある話です。
始まったばかりの制度であり、すれ違いも十分にありえます。
今年度の確定申告は荒れる危険性があるので、該当する方は早めの対応がおすすめです。
免税事業者の負担が増えるリスク、仕事が減るリスクがある
インボイスが与える影響について、もう一度確認しておきましょう。
ポイント
- 発注元: 免罪事業者に発注した仕事は、消費税分が経費にできない(余計な納税が発生する)
- 免税事業者: 納税事業者に変更すると、消費税分の負担が発生する
つまり、発注元か元々の免税事業者か、どちらかの負担が増えることになります。
元々売り上げが少ない免税事業者にとっては、大きな負担です。
また、「免税」しているのは当然免税事業者側です。
発注側としては、負担する理由がないとも言えます。
そういった事情から、免税事業者への減額や仕事自体が減る可能性もあります。
公正取引委員会が”不当な”減額交渉や仕事切りを禁止している?
確かに、公正取引委員会はインボイスに当たって見解を出しています。
https://www.jftc.go.jp/invoice/
ただし、基本スタンスとしては行き過ぎたらダメ、というレベルです。
指導の可能性がある事例として、以下のようなものが上げられています。
- 免税事業者を理由として、勝手に減額をする
- 課税事業者登録後も、免税前提の価格で発注する
- 免税事業者にならないと、仕事を発注しないと交渉する
ざっくりまとめると、上記のような場合に法律に抵触するリスクを例示しています。
ここで重要になるのが、発注元が下請け(免税事業者)と交渉をしていないことです。
経済活動としては当然ながら、交渉してもまとまらない場合もあります。
極端な場合を除いて、適切な競争の結果として取引を継続できなくなったとなるでしょうね。
取引を止めた理由は確認できない
そして、多くは取引を止める理由を確認できない点も注意が必要です。
一々「あなたは免税事業者なので取引しません」と伝えません。
他に良い業者が見つかった、内製化した、などいくらでも理由付けができます。
いつの間にか仕事が来なくなったという事態が、免税事業者を襲うかもしれません。
日本経済に悪影響がある
何度か記載している通り、事業者か発注者のいずれかには負担増となります。
厳密には増税ではないものの、控除の減額や廃止と近いと言えるでしょう。
形はともあれ単純に手取りが減ります。
深くは踏み込みませんが、金融緩和とは相反する影響を与える恐れがあります。
海外と違い、日本は長いデフレに悩まされてきました。
デフレからの脱却局面で、足枷となるのは避けたいところです。
課題があってもインボイス制度に賛成する理由
まだまだ課題のありそうな制度ですが、2つの理由から賛成しています。
- 制度自体は必要であると考えていること
- 課題のほとんどは、工夫で解決できると考えていること
制度自体と、実現の手法は分けて考えてみたいと思います。
新しい制度は手続きが増えるもの。メリットとデメリットを比較しよう。
新しい制度が始まれば、特に初期は手続きが発生します。
一方で、インボイス自体は国際的には当たり前にある制度です。
文化や伝統であればともかく、このような制度に独自性は不要でしょう。
インボイス制度で変わること
インボイス制度によって、実際にかかる税金の額が明示化されます。
軽減税率でない場合はあまり実感ができないかもしれません。
最も効果を発揮するのは、品目ごとに税率が異なる場合です。
生活必需品は低く、趣向品は高めに設定されやすいですね。
海外のデータを見ると、その区分がわかりやすいでしょう。
消費税(付加価値税)の国際比較: https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/108.pdf
インボイスを一律義務化にした方が手続きは楽
手続きが面倒な理由は、義務化ではない点が大いにあると考えています。
一々免税かそうでないかを確認するのは、正直面倒です。
後述しますが、制度の問題は制度として。
お金の問題は、税率などで解決すべきでしょう。
金額の負担増は、お金の取り方で解決すべき
インボイスで増えてしまう負担は、大きく二つだと思います。
- 手続き的な負担が増えること
- 金額的な負担が増えること
例えば、公正取引委員会には、3つの事例がありましたね。
それらは全て、金銭面でのトラブルに該当します。
税金の話なので当然と言えばそれまでですが、逆に言うとお金で解決できる問題です。
お金がトラブルになるなら、後で全額還付してしまおう
個人的な結論としては、後で全額還付してしまえばいいと思います。
インボイスの発足にあたり、時限付きの軽減措置がついています。
軽減しても負担がある以上、不安になるのは仕方のないことでしょう。
むしろ振り切って、全額戻してあげればいいと思います。
納付経験を積んでもらうために「還付」としていますが、100%軽減でもOKです。
軽減幅が2割・5割・10割であろうと、構造的には同じですからね。
経済対策なら、「現」納税業者も合わせて軽減措置
制度は実質負担増になりますが、これを逆手に取ることもできると考えています。
インボイスによって税率の柔軟性が増すので、減税にも応用が可能です。
現状はご存知の通り、消費税は8%の軽減税率と通常の10%が共存しています。
これを一律に5%するなり、経済対策としてもやりようはあるでしょう。
このように状況に合わせて柔軟策が取れるため、制度自体には賛成しています。
賛成派でも賛同できない2つのポイント
何度か書いている通り、制度には賛成しています。
ただし、ネットを見ているとちょっと厳しいかなという意見もありました。
※変化する側なので、免税事業者に対する意見です。
消費税を納めていない現在がおかしい。今後は増額交渉をしろ。
これまで免税事業者でも、消費税を一緒に請求していた方も多いのではないでしょうか。
これに対して、本来は払うべきものを取っているだけという意見があります。
構造的には正しいのですが、個人としてはその認識に対して疑問です。
消費税請求の意識(個人の感想)
管理が甘いと言われればその通りではあるものの、消費税分も合算で考えてしまっていました。
フォーマットに消費税の区分があるので、そのまま使っているだけです。
110万円請求をした時に、100万円+消費税10万円の意識がほとんどありません。
あくまで110万円の仕事をしたという感覚です。
人それぞれですが、今まで消費税を請求していたのに、インボイスになると増額交渉をする必要がある、という方も多分にいるのではないでしょうか。
消費税も払えないなら、個人事業は向いていない。あきらめて転職すべき!
緊急事態宣言時にもありましたが、ぎりぎりで運営している方も少なくないです。
私の周りにもチラホラいるタイプで、自分が生活できればいいという方もいます。
値上げできるならガンガン上げてしまえという姿勢は、あまり好きではないですね。
嫌儲主義ではありませんが、突き詰めすぎても息苦しくなりそうという温度感です。
要するに、やや乱暴すぎる気がしています。
反対する方に賛同できるポイント
反対する方の意見でも、同意できる点はあります。
それも、前言をひっくり返すような部分です。
当然、きちんと理由はあります。
一度上げた税金は戻さない
繰り返しになりますが、制度は必要で手段を考えるべきという立場です。
経済の影響を踏まえて、軽減策などはもっと充実すべきだと思っています。
その点で、過去の歴史から補助金は配っても減税はしない感じはありますね。
そういう意味では、「一度上げたらどうせ戻さない。だから初めから上げさせないべき。」というのは理解できるポイントです。
インボイス制度の今後に期待すること
事実として、インボイス制度は始まりました。
もし本格的に反対するなら、遅きに失した感があります。
そこで、どうやったらよりいい制度になるかを考えるべきだと思います。
消費税の”ゆがみ”を是正しよう
日本の消費税は、海外に比べて歪んでいると思います。
具体的には、その使用用途です。
経済関係は学者兼Youtuberの高橋洋一氏あたりが参考になりますが、海外の消費税(付加価値税、売上税)はざっくり次のような特徴があります。
- 税率は景気動向などによって、しばしば変更する
- 生活必需品と趣向品で税率を分ける
- 国税ではなく、地方税収として扱う
- 社会保険には使用しない
消費税は、海外の付加価値税と全く同じものではありません。
ただし、社会保険料に使う(逆進性の観点から合わない)ことや、国税としても徴収するなど、現代的でない部分は是正すべきだと思います。
中途半端な選択制はやめて義務化しよう
正直なところ、分岐があるのが一番面倒だと思います。
ある人はインボイス対応で、ある人は非対応みたいな状態です。
何らかの形で損失があっても、あなたは選んで課税/非課税なんでしょ、という免罪符を与えることにもなります。
制度設計サイド(官僚)の責任を取りたくない感が伝わってくる気がします…。
まとめ:制度そのものとやり方は別の議論。よりよい社会形成を目指そう!
何より大切なのは、住みやすい社会を作ることです。
その点インボイス自体はあった方が良いと思います。
しかし、税負担や手続き負担など考えるべき課題もあるでしょう。
金額的な負担を無くしながら、こんな利点があるなら多少請求で手間がかかってもいいかな、というラインに引き上げることが急務だと考えています。